鳥羽・河内火祭りトップぺージへ

河内盆祭次第・1項

--この祭りについての詳細説明 --

《祭りを運営している組織と役割について》

【河内農業共同組合】

『盆祭(大念仏・火祭り)』を主催する団体。理事7名によって運営されている。
昭和57年までは「地下(じげ)」であったが、河内町は地下財産として山林を所有していたため、行政区としての町内会と財産の権利を継承する組合に分けた。
組合は「地下」の財産および行事をすべて受け継いでいる。

【行事の執行組織】

組合には、理事会とは別に、各行事を執行する組織として次のものがある。

◇年寄(としより・地元では「じじら」という)
10人。一老、二老、〜十老
◇中老(ちゅうろう)
不定 中老頭〜中老〜介添(かいぞえ)
◇若衆(わかいしゅう)
不定 若衆頭〜年度内に15歳になる男子
注…各役割はすべて一年交替となる。「日上り(ひあがり)」と呼んでいる。
序列を生年月日の順に決めていることから「日上り」というのであろう。
◇三席(さんせき)
一老と中老頭と若衆頭の会合を三席といい、祭行事の執行などはここで協議される。
(組合長および理事も加わることがある)

河内町では、満年齢15歳(現在は中学3年生)になると、生年月日順に厳密に序列ができ、その順で若衆の「下役」に入れられ、若衆、中老、年寄の順に日上り、最後に一老を一年間勤めると、すべての役を終え無役となる。

【『盆祭』の実質的執行組織と役割】

盆祭においては、「若衆」のうち頭役4人、頭下(ふご)2人、鉦廻し2人の8名を「鉦役」と呼び、行事を取り仕切るが、中でも序列1番の「若衆頭」が絶対的な権限を持つ。

@鉦役 
8人。
頭役4人 羽織袴、青竹を持つ。
頭下2人 上(かみ)と下(しも)がある。上が、下役の上と共に柱松番の役割。服装は不定。
鉦廻し二人 鉦打ちの監督役、青竹を持つ。
A鉦打ち(かねうち)
人数は不定であるが、近年は20人程度。鉦の数は2つ。
  • 鉦打ちの指揮統括は鉦廻しがする。
  • 上(かみ)鉦、下(しも)鉦に分かれる。
  • 旗切り(2人)は、鉦打ちの上より一番二番が兼任する。
    ※注…河内町では一番二番を「かみ」「しも」という言葉で表現する。
B楽廻し
2人。羽織袴で青竹を持ち、楽打ちを統括する。
C楽打ち(がくうち)
定員は年により変更される。
 頭領楽4人 楽(大太鼓)10個とカンコ(小太鼓)2個の総指揮者にあたる。盆祭の花形である。
 二番楽は、サイズが一番大きな太鼓。
 太鼓の大きさは二番→一、三番→四、五,六番→七,八,九,十番の順で小さくなる。
 ※注…九番十番は、「高張り提灯持ち」を兼任。
D小太鼓(カンコ)
4人 小太鼓の数は2個。
E下役(しもやく)
不定(平成12年までは6名であった)
祭りへの新参加者で、あらゆる雑用を果たす。昔は「水汲み」と「ふれ(布令か?)」が重要な役。

※その他 近年、少子化や職業の多様化などの影響で、平成9年から準備段階で、「中老」が交代で出役するようになった。
注…以上の祭り執行組織は、ほぼ70人ほどで、執り行われる。
注…年により不参加者がでるが、その承認は8月7日「なぬかびの出合い」で決められる。
 「ひっそく(逼塞)」と「たぎょう(他業)」があり、その理由はいろいろあるが、「ひっそく(引足とも書く)」は若衆からの離脱を意味し脱退となる。
「たぎょう」は文字どおり他の地で仕事などをしているための一時的な不参加である。この場合も、若衆によって承認されないとどんな事があろうと参加しなければならない。
注…「青竹」を持っているのは、ルール破りの行動などをいさめるためで、楽が後退したり、鉦を落下させた時など、青竹が若衆の身に容赦なく振り下ろされる。

《『盆祭』の日程》

  1. 「七日(なぬかび)の出合い」8月7日(旧7月7日)
    • 「柱松」を運ぶ
      おんだ橋(小野田橋)に午前8時集合。遅参は許されない。前年、祭り翌日に、この橋の下に浸けて(いけて)おいたものを取り上げて、隠殿岡(おんでんがおか・隠田岡とも書く。地元では単に「おか」という)に運び上げる。
    • 柱松は、節のある杉で、高さ10メートルほど。
      古い文書には四間三尺とある。昔は、金気に触れてはいけないといって、担い棒(いないぼう)に縄を掛け、柱松を吊し人力で運んだ。
    • 太縄つくり、楽直し(楽の修理)
      近年はこの日に、太縄を編んだり、楽(太鼓)の修理をしたりする。
      以前は、1軒から縄25尋(1尋〔ひろ〕は大人が両手を広げた長さ。およそ1.8メートル) づつ徴集していたが、不揃いや無駄がでるので購入に切り替えている。
      昔は、ほかに竹2本、麦わら2束を持ち寄った。その為に麦を作らねばならず大変なので、現在は伊勢の農家で一括して作ってもらい、お金で精算している。
    • 楽直しは、前年に痛んでいたものを、楽廻しが中心となって行う。

    ※[ことわり(断り)]…この日、本年の祭りに不参加者の名を若衆頭が披露するが、これに対して「ひっそく」「たぎょう」の同意をするとともに、「過料(かりょう)」を課すこともある。

  2. 「れんしゅう(練習)」 8月7日〜13日
  3. 8月7日の夜、観音堂に本年の役割が貼り出される。
    その日から「楽のれんしゅう」が始まる。それには新しく役についた「頭領楽」や「楽打ち」「鉦打ち」「カンコ(小太鼓)」「下役」が  参加する。
    以降、7〜13日の練習の責任者「かねばん」は以下のような順で勤める。
    鉦番(かねばん)・鉦の見張り番の役で、練習が終わった後、鉦を小屋にしまうまでの番をする。

    • 7日…鉦廻しの下
    • 8日…鉦廻しの上
    • 9日…頭下の下
    • 10日…頭下の上
    • 11日…頭の四番
    • 12日…頭の三番
    • 13日…頭の二番

    ※「楽」の指導は「楽廻し」がする。

  4. 「旗張り」 8月14日 午前9時頃から組合の事務所2階で
  5. 「柱松」の「つぼき」の上に立てる3本の「旗(あるいは幡)」を製作する。「化粧する」ともいう。

    • これには介添(中老になった人)2人と頭役上より2人の4人があたる。
    • 「旗竿」を切るのは、そのほかの6人が当たり、竹やぶを持った人から寄贈を受けて竹竿を切る。
    • 竹は13.5メートル。3本。
    • 竹竿の先に付ける「旗」は3つで、いずれも「決まり」にしたがって、紙を切り絵を描いて作る。
    • 旗には、東の『ウチワ』、西の『オオギ』、中央(南)の『ムカデ』がある。
  6. 「大ならし」 8月14日 午後7時 観音堂で
  7. 「大ならし」とは「大鳴らし」ともいわれるが、「大均し」あるいは「大慣らし」かも知れない。
    いずれにしろ、全員参加の前日の総合練習、仕上げの練習である。この日、若衆頭は、仕上がりの状態を検分して、最後の 判断を下す。
    若衆頭が許可を出すまで練習はつづく。

  8. 「柱松立て」 8月15日 午前8時 隠殿岡
  9. 午前8時、隠殿岡の六地蔵前に集合。若衆と中老20人が参加する。但し、平成9年からは中老出役により頭領楽を除く楽打ちは免除されている。

    • 8月7日に運ばれていた「柱松」に「つぼき(壺器)」を取り付け、旗の竹をつけて、立ち上げる作業。
    • 「タイ」といわれる火祭りの際、「つぼき」へ投げ上げて点火させる松明は、最低でも100本以上用意される。これを作るのは「介添」 2人である。タイも岡で作る。
      これで、「盆祭」の準備は完了する。それぞれは家へ帰って、休憩する。

※このコンテンツは鳥羽市浦村町にある「海の博物館」館長 石原義剛さんに執筆していただいた文章を元に作成しました。

2005-09-06更新 鳥羽・河内火祭り