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河内盆祭次第・2項

--この祭りについての詳細説明 --

《盆祭・本番 8月15日》

(平成13年の記録)

1.勢揃い

午後6時30分 観音堂前

2.岡へ上がる

3.踊り場へ到着後、鉦と楽・カンコを配置して開始

◆引き楽と押し楽とは
列の動きは、頭領楽が先頭に立ち、@・ACEGIの楽は、「楽(太鼓)の位置」が自分の後ろにあって引っ張ることになり、 BDFHの楽は、太鼓の位置が自分より前にあって進むことになる。
この場合、列は2列になるが、Bの楽は、決して@の頭領楽の前に出てはいけないこととされている。
◆頭領楽「跳ぶ」動作について
楽を叩きながら「跳ぶ」のは大変な体力と技術を要する。しかし、楽が跳ぶところに、盆の供養の真髄があると若者たちは
思っているから真剣に跳ぶ。この姿が逞しく美しい。
◆『ヘイ』について
「跳ぶ」といわれる中で、頭領楽が片足を上げている状態を『ヘイ』という。この間は太鼓も鉦も音を止める。
静寂の状態をつくる。頭領楽はここでの所作を出来る限り大きく見せる。
歌舞伎でいう六法を踏むにあたる大切な見せ場である。
鉦はその状態を崩すよう邪魔をしに行くが、頭領楽はそれに耐える。
帰りは3回の跳びで帰るがこの間の所作も大きな見せ場となる。

4.六地蔵前

5.茶屋の婆場

6.五輪塚

7.柱松の広場へ移動

《火祭り》

30分の休憩の間、人々はそれぞれの自分の墓地に集まり、家から持って来た御馳走(寿司が多い)を広げて、ご先祖様とともに食べて、飲む。盆提灯の明かり、燈明の明かり、線香の香りの中でのまさに宴会である。

イ…若衆頭tが「タイ」の数える
柱松の下で明々と焚き火が燃え盛る。午前0時を過ぎていた。
若衆頭が20、30と「タイ」の数を数え始める。突然、タイを奪おうとして若衆たちが殺到する。若衆頭たちは青竹で 思いっきり ひっぱたく。壮烈な奪い合い。
ロ…若者たちがタイを投げる
タイを受け取った若者が1つ2つとタイを「つぼき」目がけて投げあげる。タイがつぼきに入ると群衆の歓声が上がる。
つぼきに火が着く。
ハ…「つぼき」燃え上がる
つぼきから爆竹の音が撥ね、鉄砲花火が群衆へ向けて飛ぶ。火炎が上がる。
二…旗竿が倒れる
つぼきが燃え上がるとともに、旗竿に火が移り、やがて旗竹が倒れる。群衆の歓声。
ホ…柱松を倒す
柱松は「つぼき」の下部で「つづ(続)」と呼ばれる輪状の太綱で連結された綱3本で、杭に結ばれているが、「つぼき」に点火した火が最大になるのを見計らって、綱が解かれる。
柱松が西へ向かって倒れる。大歓声。叩きつけられた柱から、地に火炎が這う。若者たちが消火に駆けつける。
柱松が倒れて、火祭りはあっという間に終わる。クライマックスは一瞬にきて一瞬に去る。

《観音堂でのしょうろう送り(精霊送り)》

8月16日午前1時 観音堂

「柱松」 の行事が終わった一行は、すぐに観音堂へ降りて、そこで最後の「大念仏」を披露する。
これを「しょうろう送り」という。1打ち揚げされ、最後に「とうざい(東西)」と大声を上げて、すべてが終了する。
そこで若衆頭は、組合長にすべて行事が終了したことを報告する。
さらに、「柱松下ろしの頭」に鉦打ちの上より2名を任命して、引き継ぐ。
任命された「柱松下ろし頭」はこの仕事の免除者の決定もする。頭領楽は昔も今も免除されている。
柱松下ろしの時刻は、午前9時、中老10人と15日の出合いを免除された楽打ちが行う。

《おおかんじょう(大勘定)》

8月16日(祭りの翌日)公民館

朝9時ころから、鉦役8人が集まって、祭り費用の集計を行い、収支を合わせる。その合計を「がくいり(楽要り)」といい、それを全組合員数で割って「いりか(要り価)」を計算し、すぐに「下役」が、村中を1軒づつ回って集金する。本年は1軒につき1万円であった。このところ毎年、ほぼ9千円〜1万円程度。全費用は100万円ほどになる。この集金を断ったり、遅延する家はないという。

★《「大念仏」に使ったもの》

1.楽(がく…太鼓) 10張 欅づくり
「刳り抜き胴締め太鼓」…太鼓の皮が鋲止めになっていない。鼓のように紐で締めてある。
平成13年3月に新調。古い楽は海の博物館へ寄贈。但し「一番楽」だけは、河内公民館に保管。
2.楽撥ち(がくはち) ホウの木製
寸法…直径3寸厚さ1寸2分の丸い頭部に1寸径で長さ1尺3寸2分の柄を付ける。
3.鉦(かね) 2個 8寸 15貫目
現在の鉦は、上鉦72.3キロと下鉦72キロ
「若連中記録簿 明治27年」
・鉦破損のため新調 昭和3月の例
一…金一〇五円  一貫目に対し七円の相場
一…金 四四円七〇銭 古潰し一貫目三円
一…金 六〇円三〇銭 製作代
一…金 三八円九〇銭 諸雑費
総合計   九九円二〇銭 (購入額)
4.シンモク(振木) 鉦叩き 藤製
毎年「鉦役」は山へ入って適当な藤(フジ)を探して製作する。
5.カンコ(小太鼓) 2個
6.羽織・袴
若衆頭4人、鉦廻し2人、楽廻し2人の8人が着用する。 ほかに、介添も着する。頭下は不定。
介添は「タイ」を火付けの直前に若衆頭に渡す役があり、それまで保管する重要な役割。
7.じばん(襦袢)
楽打ち(楽じばん)、鉦打ち(鉦じばん)が着用する法被(ハッピ)で、これを着ていない者は楽も鉦も打つことが許されない。
8.キリコ 初盆の家が戒名をかかげる笠鉾
9.高張提灯 「河内地下」の墨書がある。 2丁
10.ホラ貝 2個
 「若連中記録簿 明治27年」」 に記載あり。
明治32年旧7月
一…金 二円五〇銭 ホラ貝二ツ買求メ候
昔は「触れ」や「先導」の時に吹いたと思われる。

★《「火祭り」に使ったもの》

1.柱松 杉 10メートルほどの丸太 節の多いもの。
「明治4年 定」には、「火柱 長さ 4間半」とある。
2.つぼき 柱松のほぼ先端部につける、半円錐状の麦ワラ製の壺。
燃えやすくするため、麦ワラを外側とし、内にシキビを詰める。
麦ワラの部分に近年は、爆竹や飛び散る花火を仕掛ける。
3.綱
柱松を、東、南、西で支える太い綱。地の方は杭に結び付け、柱の方は太い綱の輪を3個繋いだもので縛っている。
4.旗と旗竹
青竹で13.5メートル。
「明治4年 定」には
扇        3尺3寸
はた丈ケ     9尺 はバ金尺
うちわ      2尺口
とあり、竹の長さはない。また、ムカデは「はた」と書かれている。
5.タイ
「しょうろう箸」を作る「オガラ」の束。端に「長石」を縛り付け、投げ易くしている。
正式には100個でいいが、近年は150個くらい作る。

☆これらの寸法仕様については、若衆頭が引き継いでいる「万代」の帳箱(帳面の入った箱)にある「隠殿岡 大念佛 火柱拵之控」には、年により柱松の長さや「旗」の大きさの指定が異なって書かれている。それによると年とともに僅かずつだが大きくなる傾向がある。


※このコンテンツは鳥羽市浦村町にある「海の博物館」館長 石原義剛さんに執筆していただいた文章を元に作成しました。

2005-09-06更新 鳥羽・河内火祭り